キンモクセイについて

正直な話、キンモクセイはあまり好きではない。

いや、キンモクセイ自体が嫌いというわけではない。病害虫に強く丈夫な木だし、強い芳香のある花は秋の風物詩とも言えよう。

私が言いたいのは、手入れの話だ。
キンモクセイは基本的に、円柱形に刈り込んで仕立てる”ローソク仕立て”にする。比較的簡単で誰でもできる仕立て方なのだが、だからといって適当にやっていると、後で痛い目を見ることになるのだ。キンモクセイに限らず成長の穏やかな樹木は、形が大きく崩れることはあまりなく、浅く刈り込むだけで大体形になってしまう。手間も枝ゴミも少なく済むからといって毎年そうしていると、じわじわと巨大化してそのうち手が付けられなくなってしまう、というのがお約束だ。これは生け垣などでもよくあるパターンで、本来の幅の3倍ほどに分厚くなった樹木の壁は、職人の心を折るに事足りる。
更にいうと、モクセイの仲間は枝葉がしなやかで硬く、剪定ゴミが非常に嵩張る。これが大量にあると、割と地味にうざったいのだ。

例え樹形が見た目良くまとまっていても、2年に1回くらいは深めに刈って大きさを維持しておくべきなのである。刈り込んだ後、樹冠に沿って生える立ち枝や、間延びしたような絡み枝などを落としてやるとなお良い。ローソク仕立ての樹木は、向こう側に太陽や空が透けて見えるくらいの枝数が美しいとされているので、目安にしよう。

雌雄異株という言葉がある。雌株と雄株で分かれるタイプの樹木のことで、キンモクセイもこれに当たるのだが、日本には雄株しか存在しないらしい。もしも実が成っているのを目撃したのなら、それはキンモクセイではなくウスギモクセイという別種なのだそうだ。
彼らが毎年馥郁たる花を咲かせるのは、何も我々人間を楽しませるためではなく、一重に繁殖のためである。いもしない異性を求めて咲き誇る彼らを思うと、甘い香りも心持ち切なく感じるものだ。

キンモクセイの原種とされるギンモクセイ。
葉は外側に丸まらず、鋸歯が目立つ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。