バイパーボアを飼う

和名ハブモドキボア。一枚一枚にキールが立つ鱗や太短い体型、鋭い顔つきなど、どこをとってもハブにそっくりだ。しかし実際に飼育してみると、その見た目や生態はむしろブラッドパイソンのミニチュア版といったところだろうか。

家ではどの種のヘビも、一律”プラケ+ペットシーツ+タッパーの水入れ”で飼育しているのだが、このヘビは一日の半分以上は水入れに浸かっている。本来は熱帯雨林に生息しているヘビなので、多湿な環境を好むのだろう。本当は、プラケやシェルターに水苔などを敷き詰めて加湿してやるべきなのだろうが、不衛生になりやすく掃除の手間もかかるので、あえてペットシーツを使用している。現時点で2年近くこの環境で飼育しているが、病気や脱皮不全など大きな問題もなく、餌食いも良好で順調に成長している。

この環境でも案外不満は無さそう?

以前イベントに出店していたショップの方から伺った話。バイパーボアの繁殖をしていると、様々なカラーバリエーションのベビー達が産まれるのだが、その多くは現時点では品種として確立していないのだという。あくまでも”個体差”であるらしいのだ。黒褐色に不明瞭なボーダー模様というのが基本色で、黄色っぽいもの、赤っぽいもの、黒っぽいものや、腹側のみが赤や黄色のものなど。中でも記憶に残っているのは、”スーパーレッド”と銘打たれた、全身が鮮やかな赤色に染まった品種(?)である。ちなみに家で飼育しているのは、”レッドベリー”という腹面の赤い個体のオスだ。『ゴジラvsデストロイア』に出てくる、腹部が赤く発光したバーニングゴジラに配色が似ている、と言って分かる方は果たしていらっしゃるだろうか?まあとにかく、非常にカッコいいヘビなのだ。

腹面の赤がカッコいい。あまり見せてはくれないが…

ハンドリングに関しては、基本的にはできないものと思っていたほうが良い。現在8匹いる家のヘビたちの中で唯一、触ることすら躊躇うほどの暴れん坊なのだ。しかもこいつは手に持ったところで、他の蛇のように巻き付いて足場を確保するでもなく、ただ単純に暴れる。それはもう、陸に挙げられたマグロの如く、暴れまくる。力も強いから、手に負えない。その内、手から滑り落ちてしまうか、そうでなければ鋭い牙で噛みつかれるか、どちらにとっても危険でしかない。大人しい個体もいるのだろうか、私には想像もつかないが…。ただ、よく言われるように、所謂”スイッチが入る”のは割と遅めなので、ケージ掃除などやむを得ない場合は、ヤツがボーッとしているうちに素早く持ってサッと移動させてしまえば、意外に暴れなかったりもする。それでも噛みつかれるのが怖いならば、ちょっとした小技がある。未使用のペットシーツを広げてヘビの上に掛け、その上から掴んでしまえば、まず噛まれることはない。別にタオルでも新聞紙でも何でもいいのだが、家では手近にあるペットシーツを使っている。

もう一つ特筆すべき点をいえば、元々代謝の低いヘビ類の中でも、彼らは輪をかけてスローライフな生き物なのである。脱皮の前兆である目の白濁を確認してから、普通のヘビなら一週間とかからずに脱皮するのだが、彼はいつまで経っても脱ぎ始めない。その後二、三週間ほど経っただろうか、見間違いだったのだと思いこんで忘れた頃に、テキトーに脱ぎ散らかした靴下のような抜け殻が、大量のフンと共に水入れの中に沈んでいるのだ。普段の給餌でも、エサに飛びついて締め付けるまでは恐るべきスピードを発揮するくせに、そこから一向に動かない。このときに刺激してしまうと、エサを離してしまいかねないので、なるべく静かに時間を潰すのだが、トイレに行って、ついでに歯も磨いて、ちょっとベッドに横になって休憩して、それから戻っても、まだ同じ姿勢でマウスを締め続けているのだ。慎重なのか、単にのんびり屋なのか分からないが、マウス1匹飲み込むまでに2,30分程はかかるだろうか。とにかく遅いのである。週に一度行う生き物たちの一斉メンテが4時間を要するのは、半分くらいはコイツの所為だったりする。排泄の頻度はかなり低く、溜め込んでから一気に出すタイプなので、掃除自体は非常に楽なのだが。

目ぇ真っ白。ここから脱皮まで二週間はかかる。

太短く地味目な色彩から”う◯こヘビ”などと揶揄される彼らだが、他には無い良さを持った魅力的なヘビだと思う。小さなスペースでゴツい印象のヘビを飼いたいのならば、このバイパーボアをおすすめしたい。

厳つい顔も魅力的。

ピナス・ピネア 盆栽(風)仕立て1

ピナス・ピネア、和名はイタリアカサマツという。ホームセンターのガーデンコーナーで、季節の草花と並べて置かれる可愛らしい幼木を見かけるが、彼らは歴とした樹木である。

数ある樹木の中でも、マツ類が特に好きな私は、他には無い色合いや雰囲気のこのマツの仲間を一も二もなく購入した。…のだが、調べるとどうやら、青みがかった爽やかな姿は若い間だけのようで、次第に日本の松に似た姿になっていくのだという。少々がっかりはしたが、日本の松に似ているということは、それに準じた仕立て方ができるということだ。そんなわけで、ピナス・ピネアの盆栽風仕立てに挑戦しようと思った次第である。あくまでも盆栽”風”なのは、私の作るそれが盆栽と呼んでよいものなのか分かりかねるからだ。

私の考える盆栽とは、「仕立てた植物体の大きさに対しての土の量を最低限まで少なくした鉢植え」である。鉢は、より小さく、より浅く、それゆえに水の管理が非常にシビアなのが盆栽の常だ。そこでズボラな私は、どんな植物の場合でも、余裕のある少し大きめの鉢を使って土量を多くとるようにしている。そんなインチキ品なもんで、胸を張って”盆栽”だなんて呼べるものではない、というのが実のところである。

まあ言い訳はともかく、洋マツを盆栽もどきに仕立てようという話だが、ネットで検索すると既に挑戦している方もいらっしゃる様子ではあるが、まだまだ情報は少ないようだ。これからどういう樹相になってゆくのか想像もつかないので、楽しみだ。

施工前。幼木購入から2年弱、初の剪定。
不要枝を根本から剪定。
枯葉を落として各枝の先端の芽を摘む。一応長い本葉も抜いてみる。今回は完了。
  • 松脂は柑橘っぽい香り。
  • 柔そうな見た目に反して、枯葉は手に刺さって痛い。
  • 若い間だけかもしれないが、クロマツや赤松などと比べて、脇芽がかなり出やすい様子。