コーンスネークを飼う

私にとって、ヘビは憧れの存在だった。

物心ついた小学生の頃には、校庭で走り回っている同級生たちを尻目に、隅っこの草むらで虫たちを追いかけ回していた、そんな記憶がある。
当時住んでいたのは、東京都でありながら都会とは言えず、かと言って山なんかがあるわけでもない、なんとも中途半端な町。
アオダイショウやらシマヘビもいるにはいるが、滅多にお目にかかることができない、そんな土地柄もまた憧憬を助長したのだろうと思う。

そんな憧れのヘビが、よもやペットとしての地位を確立していようとは、初めて知ったときには大層驚いた。
言うまでもなく即時購入しようとしたところを、当時の同居人に「ヘビだけはマジでやめろ」と必死の形相で止められることになったのだが、まあそれは別の話。

それから紆余曲折あったが、都内の即売イベントでついに念願の初ヘビ、コーンスネークのゴーストという品種の個体をお迎えすることとなった。
このコーンスネーク、実は私の飼育する初のヘビであり、一緒に購入したフトアゴヒゲトカゲとともに初の爬虫類でもあった。
執筆時で、お迎えからおおよそ二年半。両者とも何事もなく順調に成長している。

それからというもの、イベントやらショップに行くたびに購買意欲に負け続け、徐々に生体たちは増えていった。
一歩踏み入れてハマったが最後、二度とは抜け出せず深みへと引きずり込まれる。
沼という言葉の意味を、身を持って実感したのだった。

さて、肝心のコーンスネークの飼育について。
前述のように爬虫類に関しては二年半という浅い飼育経験ながら、語らせていただこうと思う。
もちろん個体差はあるので、あくまで「うちの子の場合」としておく。

まず特筆すべきは、とにかく性格が穏やかで、それでいて物怖じしない。
我が家では、現時点で六匹のヘビを飼育しているのだが、その中では図抜けて温厚で扱いやすいのだ。
無論、噛まれたことも飛びつかれたこともない。
ベビーの頃は多少逃げ回ることもあったが、今ではシェルターから出していきなり触っても、動じもしない。

そうかと言って餌食いが悪いでもなく、安定している。
むしろ自分の限界もわかっていないようで、食い過ぎて吐き戻してしまったこともあるほどである。

サイズ感もちょうどいい。
大きなヘビを首に巻きたいような人には少し物足りないかもしれないが、大きすぎて持て余すようなことはまずないだろうと思う。

今年で三歳になるゴースト君だが、全長は1mとちょっとくらいだ。
一般に出回っている情報によると、最大で1.2〜1.5mになるらしいが、現状を見ると市販の最大サイズのプラケースならば十二分に終生飼育できそうに思える。

そうそう、良い点がまだあった。品種の豊富さだ。
今なおペットスネーク界ナンバーワンの座をほしいままにするコーンスネークには、数え切れないほどのカラーバリエーションがある。
まず野生種のノーマルからして、鮮やかな紅色のパターンである。
その派生として紫や黄色、ピンクにオレンジ、黒っぽいものから、なんと全身真っ白なものまで。

即売イベントなどに赴けば、気に入った個体がきっと見つかることだろう。

人気種ゆえのお手頃価格や、ネットや本など豊富な情報量も嬉しいところだ。

欠点、というかまあ気になる点。
餌がネズミであること。
これまで胃がもたれるほど良いところばかり語ってきたが、それでもなお補いきれないほどに、一般の方々にとっては抵抗のあるところだと思う。
中には魚食や虫食い、ミミズ専食にカタツムリ専食なんてヘビもいるが、いずれにしても受け入れ難いものだし、こういった所謂変態ヘビ達はネズミ食いに比べて飼育難易度が高いのがお決まりだ。

最初こそ抵抗はあるものの、人間慣れるものだ。
第一、 肉食であれ昆虫食であれ草食であれ、命を犠牲にして生きているということに変わりはないのだ。
そしてそれは我々人間にも言える。

ネズミが可哀想だと思うのは人として当然の感情だと思う。
だからこそその感情を、全ての食材となった生き物たちに向けることができれば、考えも変わることだろう。

いや、何の話だったか。
要するに、命に感謝して、必要以上に奪わないということが大切だと思う。
生き物の飼育なんてことが、元より業の深い趣味なのだ。

気になる点をもう一つ。
コーンスネークに限らずナミヘビの仲間全般に言えることだが、パイソンの仲間に比べて排泄の頻度がかなり高い。
パイソン達の場合、数食分を体内でじっくり消化した上で、まとめて出すことが多い。

対してナミヘビ共はというと、健康であれば餌を食うたびに糞をする。
それも、食後から2〜4日くらいの間に何度かに分けて排泄するもんだから始末が悪い。
我が家ではヘビたちの床材にペットシーツを使っているのだが、一歩タイミングを間違えれば、掃除をした直後に目の前でシーツを汚された、なんてことにもなりかねないのだ。

しかし、仮にそうなったとしても決して憎めないほどに、とぼけたような顔と仕草にはなんとも言えない愛嬌がある、と思う。

余談だが、私は最近二匹目のコーンスネークを購入した。
ハッチ(生まれたて)サイズで性別は不明、成長すると全身か純白になるブリザードという品種だ。
無論、私個人も白ヘビは大好きなのだが、この子を飼うことにした背景には、もう一つ理由、というか小さな野望があったりする。

ヘビが苦手という人の中でも、白ヘビならば大丈夫という人は、意外と多かったりする。
私の周りのそういった方々へ向けて、ヘビの素晴らしさを布教するべく、この白ヘビくんにお力添えいただこうという魂胆だ。
立派に育ってほしいところである。

コーンスネーク ブリザード。成長が楽しみだ。

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