コーンスネークが無精卵を産む

タイトル通りである。我が家の爬虫類の中で最古参、今年で5歳となるコーンスネーク・ゴーストが、産卵した。彼女はヴァージンだ。

近頃やけに餌食いがよく、丸々としていたもので、健康のために食事制限をするべきかと思っていた矢先のことである。ケージの掃除のため、大分手狭になっていた素焼きのウェットシェルターを退けた瞬間、見慣れない白い塊がゴロゴロと出てきたときは、それはそれは驚いた。最初は巨大な寄生バチの繭か何かだと思い焦った。いや今思えばアホか、という話だが。

卵を守る(?)コーンスネーク。
不完全な卵は、ソーセージのように隣と繋がっている。

指の先ほどのサイズの卵が、団子のようにまとめられていた。母親の体液なのか、何やらべとついた卵を一つ一つ外していった結果、その数なんと29個!太って見えるわけである。これだけの卵を抱えて、さぞ大変だったろう。とりあえず、彼女にはお疲れ様と言いたい。

1歳で我が家にお迎えしてから現在に至るまで、常にプラケで単頭飼いだったので、彼女が夜な夜な脱走して何処ぞのアオダイショウとワンナイトでもしていない限りは、無精卵である。しかしまあ一応ということで、卵を別容器に並べ数日間放置したが、案の定腐っただけであった。お父さん一安心。

ヘビの仲間には、単為生殖するものもいるので、もしかしたらとも思ったが、コーンスネークほど人の手が加わった愛玩動物に、今更そんな大発見はありえないのであった。

無精卵の産卵自体は、昔飼っていたセキセイインコがしていたので、珍しいことではないと思っていた。偽卵というものがある。無精卵を巣から撤去する際に、抱卵している親鳥にショックを与えないように、無精卵と交換して入れるためのものだ。鳥類にはよくあることなのだろう。思えば、朝食の玉子焼きだって無精卵なのだ。

ところが、コーンスネークの事となると、ネットにすら情報は多くない。全てのコーンスネークのメスがそうなる訳ではないのだろうか。だとすれば、事前に防げたトラブルである。

原因としてまず思い当たるのは、冬場の保温の甘さだろうか。ブリーディングの技術に、『クーリング』というものがある。冬時期にわざとヒーターを緩めてケージ内の気温を下げ、生体に季節の流れを感じさせることで、繁殖の成功率を上げるのだ。

我が家では、メタルラックを改造した温室に園芸用のヒーターを焚いて、ヘビたちの冬越しをしている。設定温度は26〜8度くらいで、真冬でも問題なく餌を食べる程度には保温できている。しかし所詮はビニール一枚の温室のこと、冷気を完全に遮断できるはずもない。温室内の温度差もあるだろうし、ケージのメンテナンスの際にファスナーを開ければ、当然ながら外気が入る。そんな半端な保温環境が、期せずしてクーリングの条件と合致したのではないだろうか。

他に原因があるとすれば、思い当たるのは餌の与えすぎだ。成長期もとうに過ぎたにも関わらず、本当によく食べる子なのだ。できる限り大きく育てあげたいという下心もあって、食うだけ食わせたのが良くなかったのかもしれない。具体的に言うと、週一回のペースでヒヨコやアダルトマウスLLを2匹くらい、コンスタントに与えていたと思う。もっとも、よく食べたから産卵したのか、産卵するためによく食べたのか、定かではないが……

いずれにせよ、事から一月半が経過した今現在、件のヘビ様は元気そのものだ。もしかしたら、自然環境下では間々あることなのかもしれない。引き続き、経過を観察しようと思う。

呑気に昼寝中。

革命的(かもしれない)虫用給水器


デュビアやマダゴキなどの餌ゴキブリを繁殖させるにあたって難儀したのは、飲み水の管理だ。
最初の頃は、水入れを設置せずに果物や昆虫ゼリーなどで餌やりと同時に水分を与えていた。乾燥系のゴキブリたちは驚くほどに水切れに強いため、これでもまあ大きな問題は無く飼育できてはいた。
が、如何に丈夫であろうが、やはり飲み水はあったほうがいいだろう。そう思い立ち、色々と考えた。条件としては、水が汚れないこと、生体が溺れないこと、加えてそこそこの容量があれば尚良い。要するに、ある程度放置できるようなものが理想だ。

あれやこれやと試行錯誤した末に辿り着いたのが、市販の鳥用の円柱型給水器であった。

小鳥用の床置き型給水器。

もともとがペットとしてメジャーな小鳥の用品なので、小さなペットショップなどでも大体置いてある。入手の容易さも魅力だ。
大きな生体ならこのまま使ってもいいのだが、小さな生体の場合、中に入って溺れてしまうことがある。これは、実際にあった話だ。
筒の中の水面を埋め尽くす程の、大量デュビアベビーのどざえもん達…正しく、地獄絵図であった。
そうならないように、給水口に布などを詰めて、水を吸い上げるようにする。うちでは、昔に買い込んで余っていたアクアリウム用のフィルターを切って詰めている。
フィルター部分は汚れるので、水換えのときに洗うか、汚れや破れが酷い場合は交換しよう。

こうして

こう。

フィルターを少し指で押して水に馴染ませてやれば、ものぐさ式給水器の完成だ。
これだけの容量があれば虫たちには充分だし、給水口が小さいので溺れたり水を汚される心配も無く、蒸発も防げるので足し水の手間も大幅に省ける。まさに革命的、と言っても良いのではないだろうか。

もしかしたら、既にこの器械を取り入れているパイオニアがいらっしゃるかもしれない。しかし一応、私なりに考えて自分で編み出したものなので、パクリだ何だという批判はご容赦いただきたい。少なくとも私が調べていた当時のネットでは、この方式はどこにも記されていなかった、と言い訳をさせていただく。

さて、良い事ずくめのこの給水器だが、欠点というか注意点もある。
まず第一に、その容量ゆえのサイズ感である。高さもあるので圧迫感があり、あまり小さな飼育ケージだとそもそも使えない。生体の性質とケースの容量を鑑みて、導入をご検討されたし。

もう一つ。これはどの給水器にも言えることだが、飼育ケージ内の床材や卵パックなどの足場材が、水に触れないようにすること。さもないと、毛細管現象によって瞬く間にケージ内の湿度が上がり、乾燥系のゴキ類などはそれだけでバタバタと落ちまくる。これも体験談だ。容量がデカいだけに、吸い上げる水の量も半端ではないので、特に気をつけたい。

最後に。実感として虫たちは新しい水の方が好きなようで、水換えした直後によく水入れに寄ってくるように思う。それが目には見えない水の変質によるものなのか、フィルターの汚れを嫌がっているのか、断言はできない。
ここまで『放置できる給水器』を語ってきて今更ではあるのだが、虫たちの為には、こまめに様子を見て適宜メンテナンスを施してやることが、理想である。生体の体調や飼育ケージ内の環境など、日々のチェックだけは怠らないようにしたい。

自戒の念を込めて。

水を飲むチャコジャイ女史。少々飲みづらそう。

爬虫類、虫たちのハンドリングについて

ハンドリングとは、小動物などを手に載せて楽しむことだ。失敗すると噛み付かれたり逃げられてしまったりすることもあるので、慣れないうちは尻込みしてしまうことだろう。ハンドリングするにあたって、コツというか意識したいことがいくつかある。今回はそれをダラダラと綴っていこうと思う。

まず第一に、基本的にハンドリングとは”手で捕まえる”ことではなく、”手に掴まらせる”ことである、と考えよう。カブトムシを例に出すと、角を持って持ち上げることが前者であり、手や腕に這わせたり登らせるのが後者、つまりはハンドリングである。あくまでも生き物が自然な状態、読んで字のごとく地に足付いた状態であることが大事だ。

個人的に一番難しいと感じるのは、最初に生体を手に乗せるまでの過程である。乗せてしまいさえすれば、後は割と何とかなるものである。

中型のトカゲなど、ある程度ガッシリした生き物の場合は、直接掴み上げるのが手っ取り早い。なるべく背中には触れないように、腹側からすくい上げるようにする。というのも、野生下における彼らの天敵である猛禽や肉食獣を連想させるからだそうで、大体の小動物は背中に触れると警戒するからだ。

昆虫などの小さな生き物の場合。彼らの少し前に手を置いて、もう片方の手で後ろからつついたり押したりして追いやる。直接触れられた後ろの手の方に彼らの意識が向くので、前の手に意外とすんなり乗ってきてくれる。前の手を置くときに、噛みつかれたりしないように注意。少しだけ距離をおいて、警戒されないようにそっと置くこと。タランチュラなどの毒虫の場合、追いやる方の手はピンセットなどを使うと安心だ。

すぐに逃げるヘビなどは、尻尾を掴んで持ち上げて、手繰り寄せるという方法もある。手繰るときも、主にヘビの腹側に手を伝わせて、上半身(?)の辺りを、広げた指に絡ませる。

そうして手に乗せた後だが、イメージとしては、自分の手や腕が、生き物たちから見て地面あるいは樹木の枝葉であるように振舞うこと。これはハンドリングをする上で、生き物たちに噛まれたり刺されたりしない為のコツでもある。彼らの目の前に手を出さず、また彼らの視界で指などの関節はなるべく動かさず、あなたが”動物である”と悟られないように、徹底して足場になりきるのだ。

注意したいのは、爬虫類などの変温動物にとって、人の体温は少々熱すぎるということ。特にカエルなどの両生類は、体表が粘膜であるという体の構造上、直接の接触には殊更弱い筈である。ハンドリングの時間は数分程度に抑えるか、彼らが人の肌に直接触れないように工夫をしたい。薄手の手袋などを装備すれば、いくらかは違うかもしれない。彼らの肌触りを感じられなくなるのが、非常に残念ではあるが…。
もっとも、熱帯の強烈な日差しの中で日光浴しているような類のトカゲなどは、この限りではないとは思うが。

最後に。聞き飽きた言葉だろうが、諦めが肝心である。
どれだけ頑張っても、馴れない個体は馴れないし、そもそもハンドリング向きでない生き物というのもいるのだ。そこで無理をしてしまうと、飼育者の怪我のもとにもなるし、なにより生体を傷つけたり、逃げられてしまう危険もある。取り返しのつかないことになる前に、触れ合うことに見切りをつけることも重要である。
しかし逆に、ハンドリング向きな生き物というのも、今日日少なくはない。爬虫類、両生類、節足動物などの小動物は、そもそも触れ合うべきではないという意見もあるが、フトアゴヒゲトカゲやレオパードゲッコーなど人の手で養殖されて久しいCB個体は、驚くほどに人馴れしているものだ。触られても慌てもせず、どころか手の上で寝始めるようなこともザラにある。彼らさえ気にしていない様子なら、必要以上に慎重になることもないだろう、と私は思うのだ。

CB化の進んだ爬虫類は、もはや品種改良された犬猫と大差ない程の『ペット』だ。

フトアゴベビー。

ウバタマムシ。

バイパーボアを飼う

和名ハブモドキボア。一枚一枚にキールが立つ鱗や太短い体型、鋭い顔つきなど、どこをとってもハブにそっくりだ。しかし実際に飼育してみると、その見た目や生態はむしろブラッドパイソンのミニチュア版といったところだろうか。

家ではどの種のヘビも、一律”プラケ+ペットシーツ+タッパーの水入れ”で飼育しているのだが、このヘビは一日の半分以上は水入れに浸かっている。本来は熱帯雨林に生息しているヘビなので、多湿な環境を好むのだろう。本当は、プラケやシェルターに水苔などを敷き詰めて加湿してやるべきなのだろうが、不衛生になりやすく掃除の手間もかかるので、あえてペットシーツを使用している。現時点で2年近くこの環境で飼育しているが、病気や脱皮不全など大きな問題もなく、餌食いも良好で順調に成長している。

この環境でも案外不満は無さそう?

以前イベントに出店していたショップの方から伺った話。バイパーボアの繁殖をしていると、様々なカラーバリエーションのベビー達が産まれるのだが、その多くは現時点では品種として確立していないのだという。あくまでも”個体差”であるらしいのだ。黒褐色に不明瞭なボーダー模様というのが基本色で、黄色っぽいもの、赤っぽいもの、黒っぽいものや、腹側のみが赤や黄色のものなど。中でも記憶に残っているのは、”スーパーレッド”と銘打たれた、全身が鮮やかな赤色に染まった品種(?)である。ちなみに家で飼育しているのは、”レッドベリー”という腹面の赤い個体のオスだ。『ゴジラvsデストロイア』に出てくる、腹部が赤く発光したバーニングゴジラに配色が似ている、と言って分かる方は果たしていらっしゃるだろうか?まあとにかく、非常にカッコいいヘビなのだ。

腹面の赤がカッコいい。あまり見せてはくれないが…

ハンドリングに関しては、基本的にはできないものと思っていたほうが良い。現在8匹いる家のヘビたちの中で唯一、触ることすら躊躇うほどの暴れん坊なのだ。しかもこいつは手に持ったところで、他の蛇のように巻き付いて足場を確保するでもなく、ただ単純に暴れる。それはもう、陸に挙げられたマグロの如く、暴れまくる。力も強いから、手に負えない。その内、手から滑り落ちてしまうか、そうでなければ鋭い牙で噛みつかれるか、どちらにとっても危険でしかない。大人しい個体もいるのだろうか、私には想像もつかないが…。ただ、よく言われるように、所謂”スイッチが入る”のは割と遅めなので、ケージ掃除などやむを得ない場合は、ヤツがボーッとしているうちに素早く持ってサッと移動させてしまえば、意外に暴れなかったりもする。それでも噛みつかれるのが怖いならば、ちょっとした小技がある。未使用のペットシーツを広げてヘビの上に掛け、その上から掴んでしまえば、まず噛まれることはない。別にタオルでも新聞紙でも何でもいいのだが、家では手近にあるペットシーツを使っている。

もう一つ特筆すべき点をいえば、元々代謝の低いヘビ類の中でも、彼らは輪をかけてスローライフな生き物なのである。脱皮の前兆である目の白濁を確認してから、普通のヘビなら一週間とかからずに脱皮するのだが、彼はいつまで経っても脱ぎ始めない。その後二、三週間ほど経っただろうか、見間違いだったのだと思いこんで忘れた頃に、テキトーに脱ぎ散らかした靴下のような抜け殻が、大量のフンと共に水入れの中に沈んでいるのだ。普段の給餌でも、エサに飛びついて締め付けるまでは恐るべきスピードを発揮するくせに、そこから一向に動かない。このときに刺激してしまうと、エサを離してしまいかねないので、なるべく静かに時間を潰すのだが、トイレに行って、ついでに歯も磨いて、ちょっとベッドに横になって休憩して、それから戻っても、まだ同じ姿勢でマウスを締め続けているのだ。慎重なのか、単にのんびり屋なのか分からないが、マウス1匹飲み込むまでに2,30分程はかかるだろうか。とにかく遅いのである。週に一度行う生き物たちの一斉メンテが4時間を要するのは、半分くらいはコイツの所為だったりする。排泄の頻度はかなり低く、溜め込んでから一気に出すタイプなので、掃除自体は非常に楽なのだが。

目ぇ真っ白。ここから脱皮まで二週間はかかる。

太短く地味目な色彩から”う◯こヘビ”などと揶揄される彼らだが、他には無い良さを持った魅力的なヘビだと思う。小さなスペースでゴツい印象のヘビを飼いたいのならば、このバイパーボアをおすすめしたい。

厳つい顔も魅力的。

マダガスカルオオゴキブリを飼う

ゴキブリらしからぬ重厚感溢れる姿と動きで人気を博す、”昆虫界の無限牧場”ことマダガスカルオオゴキブリ。英名ヒッシングローチの名前通り、怒ると「シュー」という空気の擦れるような音を出して威嚇する。マダガスカルオオゴキブリというのは総称で、体色の明るいものや、より大きなものなど、様々な種が存在する。

我が家では、その中でも最大種とされる「オブロンゴナタ」と、単に「マダガスカルオオゴキブリ」として売られていた個体群を飼育している。どちらもとても丈夫で、ほとんど放置状態でも強かに殖え続けている。

マダゴキ最大種、オブロンゴナタ!

具体的な飼育環境は以下の通り。

  • 市販の特大プラケースを使い、蓋とケースの間に網戸の網を噛ませる。
  • 床材は無し。乾燥した糞が床材の代わりになる。
  • 足場、シェルターとして紙製の卵パックを3-4段ほど、裏表交互に重ねる。
  • 給水器として、プリンカップにティッシュを詰めて加水する。
  • 亀のエサなどの固形飼料を多めにばら撒く。常にエサが床に転がっている状態にする。
  • 霧吹きなどの加湿は一切しない。

日頃の世話といえば、週に1,2回程度の水換えと、エサの補充くらいのものだ。乾燥系の生き物なので、ダニやカビの心配もないのが嬉しいところ。そういえば、時折彼らの体表を赤いダニが走り回っていることがあるが、このダニはゴキブリたちのエサのおこぼれに与っているだけで、特に害はないようだ。

上記の環境を維持していると、そのうち勝手に繁殖しだすので、大型の爬虫類や熱帯魚などの活餌に最適だ。もしそういった捕食者を飼育していない場合でも、大丈夫。別名”フルーツゴキブリ”といって、我々人間も食用することができるのだ。ちゃんとした処理をすれば、エビやカニのようで中々美味しいらしいので興味のある方は是非。ちなみに私は食べたことはない。今のところは。

注意したいことがいくつかある。まず、霧吹きなどは絶対にしないこと。この環境で加湿したら、まず間違いなくカビる。飲み水さえあれば彼らは大丈夫なので、極力乾燥を維持すること。エサを入れっぱなしで放置できるのは、乾燥系だけの特権なのだ。

それからエサの種類。以前、余っていたドッグフードを与えたことがあったのだが、彼らにはあまり評判が良くなかった。またそのエサの所為かは分からないが、エサを変えてから、落ちる個体が増えた気がするので、おすすめはしない。ちなみに一応言っておくと、ア○ムスのドッグフードだ。言うまでもないことだが、商品として悪いわけではなく、あくまでもマダガスカルオオゴキブリには向かないという意味なので、悪しからず。

もうひとつだけ。貴方は、虫の死臭というのを嗅いだことはあるだろうか?肉や魚が腐るように、虫たちの屍体もまた、腐敗する。その臭いたるや、臭いの質こそ多少違えど、紛れもなく”腐敗臭”であり、本能が拒絶するレベルの悪臭なのだ。それもマダゴキサイズになれば尚のこと、部屋中にまで臭いが広がるほどである。水換えのときに、落ちた個体がいないかは必ず確認したい。

プラケース越しに何気なく彼らを観察していると、彼らも私たちと同じ動物なんだなーと改めて思うことがある。人工餌を両前脚で掴んで食べる仕草や、重い個体がプラケースの壁面からずり落ちていく様など、なんとも微笑ましいものだ。ペットとしての愛らしさも備えつつ、極めて容易に飼育・繁殖ができて、非常食にもなるという夢のような生き物が、彼らマダガスカルオオゴキブリなのだ。

種小名不明の個体群。交雑種らしく、見た目や大きさに個体差がある。

本当にあった怖い(?)話 ヤスデの亡霊

これは私が実際に体験した話なんですがね。季節は確か、晩春から初夏の頃でしたかねー。ある日の夜、足に妙な感覚があって、ふっと目を覚ました。なんて言うんですかね、すねの辺りをこう、何か小さな虫が這っているような、こそばゆーい感覚。

「うわぁ、なんだろうなー、ゴキブリだったらイヤだなー」

なんて考えながら、ゆーっくりと体を起こした。虫ってね、刺激しちゃあダメなんですよ。彼ら、下手に刺激するとパニック起こして、凄いスピードで走り回ったり、ものによっちゃあ噛まれたり刺されたりもする。私もまあ虫に慣れてる方とはいえ、身体中駆け回られたり、噛まれたりしたら、そりゃあいい気持ちしませんからね。だから、ゆーっくりと起きて、そーっと布団を捲って、寝間着の裾を恐る恐る捲ってみた。ところが、

「…あれ、変だな…」

…いないんですよ、何にも。ゴキブリどころか、ありんこ一匹いやしない。おかしいなー、確かに何か感触はあったんだけどなーって思って、探してみる。でも、見つからない。こうなるとこっちも段々熱が入ってきて、絶対見つけてやる、ってなるんですよ。折角気持ちよく寝てたところを、起こされたわけですからね。何より、そんな何がいるか分からないような状態じゃあ、安心して眠れやしない。せめて正体だけでも一目見てやろうってんで、立ち上がって、電気をつけて、掛布団を持ち上げた。すると、出てきた。敷布団の真ん中辺り、ちょうどさっきまで自分が座っていた辺りに、コロンと黒いものが。

「なーんだ、ヤスデか…」

胸をなでおろした。ヤスデっていうのはね、どこにでもいる小さな虫で、まあー立ち位置的にはダンゴムシみたいなもんですよ。大した害もない。そいつが丸まった状態で、出てきた。よく見ると、すでに事切れているようで動かない。あー、きっと私が動いたときに潰してしまったんだなー、悪いことしたなーって思って、部屋にあった植木鉢にでも埋めて、弔ってやることにした。ヤスデを指でつまむと、ポロッ。割れて真っ二つになった。

その瞬間、背筋が凍りついた。冷や汗が、ブワァーーーッて出た。

…そのヤスデの体、カラッカラに乾いていたんです。…これってどういうことかと言うと、生きている虫の体の中って、体液で満たされているんですよ。私たち人間で言うと、血液みたいなもんですね。だから、水っぽい。生々しい話ですけどね。もしもついさっきまで生きていたんなら、もっと水っぽいはずなんだ。なのに、カラッカラに乾いてる。つまりこのヤスデ…

…とっくの昔に、この世を去っていたんですよ…

弔ってほしかったんでしょうかねぇ。土に還ることもできない部屋の中で息絶えて、寂しくて、幽霊になって救いを求めたのかもしれませんねぇ。いやー、あるんですよね、こういうことって。

擬態の達人、トビモンオオエダシャク

とあるマンションの中庭で、モミジの手入れをしていた。素性の良いモミジは、ハサミを使わず素手で摘み取るように剪定することができる。ポキポキと小気味よく、これが中々クセになる感触なのだ。

ポキ、ポキ、ポキ。

続いて細かい枯れ枝も。

ポキ、ポキ、ぐにゃ。

「うえっ!?」

思わず声が出た。見ればその枯れ枝が、グネグネと動いている。そのときの驚愕たるや、苦手な人なら卒倒ものだ。

トビモンオオエダシャク。いわゆる尺取り虫の中でも、飛び抜けて巨大なガの幼虫だ。色や質感など、枯れ枝そのもので感心するほど。あまりの枯れ枝ぶりに、剪定ばさみで両断されてしまうことも。一緒に仕事していた先輩職人の手により、哀れにも真っ二つになった彼らを見ると、枯れ枝はなるべく手で折り取ろうと思うのだった。

そんな彼らだが、サイズの割に食欲は慎ましく、また群れたりもしないので、目立った害は意外と無い。猫耳のような二本の突起の生えた顔も可愛いし、地面に落ちてもなお背筋をピンと伸ばして枝になりきる様子など、何ともいじらしいものだ。

イモムシ愛好家への第一歩として、お勧めしたい。

二本の突起が可愛い。
「いや、そんな生え方の枝は無えよ」とツッコみたくなる。

庭師の宿敵、チャドクガ

ツバキやサザンカ、チャノキを見ると、ついつい注意深く観察してしまうのは、植木屋の性と言えよう。それらの樹木の害虫であるチャドクガは、私達にとって最も厄介な部類の害虫だ。

幼虫である毛虫は、白、黒、オレンジの派手目な彩色。全身を覆う毛には、一本一本に毒がある。成虫は黄色っぽい明褐色で目立つガなのだが、なんとこのチャドクガ、蛹のマユにも毒があり、さらには成虫の状態でも毒の毛を持っている。そして産卵の際に、卵の周りをその毛で覆ってしまうのだ。卵、幼虫、蛹、成虫と一生を通して毒毛虫なのである。

植木屋でなくとも、名前だけなら聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。恐らくは最も被害件数の多い毒毛虫なのではなかろうか。直接の接触はもちろん、枝葉に絡みついた抜け殻や風で飛んだ抜け毛に触れただけでも、激しい痒みを引き起こす。更には、皮膚に毒刺毛が残っている状態で掻きむしると、痒みは全身にまで広がってゆく。さながら未知の難病か呪いのようだ。

刺されたときの対処としては、なるべく掻きむしらず、患部を流水で流すかガムテープなどで残った毛を取り除いた後、塗り薬を塗る。市販の薬では、ムヒアルファEXが一番。虫刺されの薬は数あれど、毛虫に効くと明言しているものは、そう多くないのだ。余談だが、軟膏薬は塗布して約20分くらいから、急激に皮膚に浸透していくらしい。覚えておきましょう。

木に付いている毛虫の処理は、市販のスプレータイプの殺虫剤が手っ取り早くよく効く。仲間内では、ハチ用の高圧のスプレー剤などを兼用してしまっているが、これでもよい。少々値は張るが…

ホームセンターなどで売っている希釈用の薬剤は、発生前に撒けば予防にもなる。スミチオン、マラソン、トレボンなどの乳剤や粒剤だ。同じコーナーにある展着剤も混ぜるとより効く。

レインコートを着て作業するのもおすすめだが、時期的には暑いので汗だくになることを覚悟しよう。

私が以前勤めていた会社の昔気質な会長は、新聞紙を丸めたものにライターで火をつけて、毛虫のいる枝ごと炙ったりしていた。これなら厄介な抜け毛も残さず焼けるのだが、木を傷めるのでやり過ぎは禁物だ。

唯一の救いは、こいつらが偏食であることか。気を付けるべきは、ツバキ、サザンカ、チャノキ、シャラ(ナツツバキ)、ヒメシャラぐらいのもの。ちなみに、横文字でカメリアと名のつくものもツバキの仲間なので要注意。これらの樹木は、風通し良く剪定するなど管理を怠らないようにしたい。

これは蛇足だが、何故かこいつらは、葉が黄ばんでいるような元気の無い木には付かない。いるのは決まって、旺盛で活き活きとした樹木の枝葉の裏である。生まれくる我が子のために、青々とした美味しそうな木を選んで卵を産み、フカフカの布団で優しく包むのだ。そんな母の愛を思えば、少しは親近感が湧かなくもなくもない。

チャドクガ幼齢幼虫。ある程度大きくなるまでは、群れでまとまって過ごす。

コーンスネークを飼う

私にとって、ヘビは憧れの存在だった。

物心ついた小学生の頃には、校庭で走り回っている同級生たちを尻目に、隅っこの草むらで虫たちを追いかけ回していた、そんな記憶がある。
当時住んでいたのは、東京都でありながら都会とは言えず、かと言って山なんかがあるわけでもない、なんとも中途半端な町。
アオダイショウやらシマヘビもいるにはいるが、滅多にお目にかかることができない、そんな土地柄もまた憧憬を助長したのだろうと思う。

そんな憧れのヘビが、よもやペットとしての地位を確立していようとは、初めて知ったときには大層驚いた。
言うまでもなく即時購入しようとしたところを、当時の同居人に「ヘビだけはマジでやめろ」と必死の形相で止められることになったのだが、まあそれは別の話。

それから紆余曲折あったが、都内の即売イベントでついに念願の初ヘビ、コーンスネークのゴーストという品種の個体をお迎えすることとなった。
このコーンスネーク、実は私の飼育する初のヘビであり、一緒に購入したフトアゴヒゲトカゲとともに初の爬虫類でもあった。
執筆時で、お迎えからおおよそ二年半。両者とも何事もなく順調に成長している。

それからというもの、イベントやらショップに行くたびに購買意欲に負け続け、徐々に生体たちは増えていった。
一歩踏み入れてハマったが最後、二度とは抜け出せず深みへと引きずり込まれる。
沼という言葉の意味を、身を持って実感したのだった。

さて、肝心のコーンスネークの飼育について。
前述のように爬虫類に関しては二年半という浅い飼育経験ながら、語らせていただこうと思う。
もちろん個体差はあるので、あくまで「うちの子の場合」としておく。

まず特筆すべきは、とにかく性格が穏やかで、それでいて物怖じしない。
我が家では、現時点で六匹のヘビを飼育しているのだが、その中では図抜けて温厚で扱いやすいのだ。
無論、噛まれたことも飛びつかれたこともない。
ベビーの頃は多少逃げ回ることもあったが、今ではシェルターから出していきなり触っても、動じもしない。

そうかと言って餌食いが悪いでもなく、安定している。
むしろ自分の限界もわかっていないようで、食い過ぎて吐き戻してしまったこともあるほどである。

サイズ感もちょうどいい。
大きなヘビを首に巻きたいような人には少し物足りないかもしれないが、大きすぎて持て余すようなことはまずないだろうと思う。

今年で三歳になるゴースト君だが、全長は1mとちょっとくらいだ。
一般に出回っている情報によると、最大で1.2〜1.5mになるらしいが、現状を見ると市販の最大サイズのプラケースならば十二分に終生飼育できそうに思える。

そうそう、良い点がまだあった。品種の豊富さだ。
今なおペットスネーク界ナンバーワンの座をほしいままにするコーンスネークには、数え切れないほどのカラーバリエーションがある。
まず野生種のノーマルからして、鮮やかな紅色のパターンである。
その派生として紫や黄色、ピンクにオレンジ、黒っぽいものから、なんと全身真っ白なものまで。

即売イベントなどに赴けば、気に入った個体がきっと見つかることだろう。

人気種ゆえのお手頃価格や、ネットや本など豊富な情報量も嬉しいところだ。

欠点、というかまあ気になる点。
餌がネズミであること。
これまで胃がもたれるほど良いところばかり語ってきたが、それでもなお補いきれないほどに、一般の方々にとっては抵抗のあるところだと思う。
中には魚食や虫食い、ミミズ専食にカタツムリ専食なんてヘビもいるが、いずれにしても受け入れ難いものだし、こういった所謂変態ヘビ達はネズミ食いに比べて飼育難易度が高いのがお決まりだ。

最初こそ抵抗はあるものの、人間慣れるものだ。
第一、 肉食であれ昆虫食であれ草食であれ、命を犠牲にして生きているということに変わりはないのだ。
そしてそれは我々人間にも言える。

ネズミが可哀想だと思うのは人として当然の感情だと思う。
だからこそその感情を、全ての食材となった生き物たちに向けることができれば、考えも変わることだろう。

いや、何の話だったか。
要するに、命に感謝して、必要以上に奪わないということが大切だと思う。
生き物の飼育なんてことが、元より業の深い趣味なのだ。

気になる点をもう一つ。
コーンスネークに限らずナミヘビの仲間全般に言えることだが、パイソンの仲間に比べて排泄の頻度がかなり高い。
パイソン達の場合、数食分を体内でじっくり消化した上で、まとめて出すことが多い。

対してナミヘビ共はというと、健康であれば餌を食うたびに糞をする。
それも、食後から2〜4日くらいの間に何度かに分けて排泄するもんだから始末が悪い。
我が家ではヘビたちの床材にペットシーツを使っているのだが、一歩タイミングを間違えれば、掃除をした直後に目の前でシーツを汚された、なんてことにもなりかねないのだ。

しかし、仮にそうなったとしても決して憎めないほどに、とぼけたような顔と仕草にはなんとも言えない愛嬌がある、と思う。

余談だが、私は最近二匹目のコーンスネークを購入した。
ハッチ(生まれたて)サイズで性別は不明、成長すると全身か純白になるブリザードという品種だ。
無論、私個人も白ヘビは大好きなのだが、この子を飼うことにした背景には、もう一つ理由、というか小さな野望があったりする。

ヘビが苦手という人の中でも、白ヘビならば大丈夫という人は、意外と多かったりする。
私の周りのそういった方々へ向けて、ヘビの素晴らしさを布教するべく、この白ヘビくんにお力添えいただこうという魂胆だ。
立派に育ってほしいところである。

コーンスネーク ブリザード。成長が楽しみだ。

蛇は可愛い

閲覧注意、などと書きたくはないのだ、本当は。こんなにも愛らしく美しい生物が、どうしてそこらのグロ画像なんかと同じ扱いなのか、遺憾の意を表する。

人々がヘビを嫌う理由は、おおよそいくつかのパターンに分けられる、と私は分析する。一番多いのが、未知のものを怖がる恐怖心からくるものだろう。幽霊や宇宙人なんかが恐ろしいのと同じ理由である。何を考えているのか、どんな挙動をするのか、分からないというのは、それだけで恐怖足り得る。

田舎のほうの農家の方ならともかく、人工建造物の立ち並ぶ街中の人々にとって、ヘビは身近な存在とは言い難い。我々のようにはっきりとした目や口を持ちながら、手も足もなくヒョロリと長いその姿は、異形そのものだ。知らない人が恐怖するのも頷ける。

二つ目の理由は、先入観によるものだ。皆様はヘビと聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか?毒がある、噛み付く、巻き付く、嫉妬深い、いい方と言えば白蛇は縁起が良いだとか、そんなところだろうか。

日本において、そのヘビのイメージを決定づけているのは、マムシおよびハブの存在が大きいと思う。人知れずひっそりと生きている無害なヘビたちと比べて、注意喚起の看板やテレビ番組などで目につく機会があまりにも多いのだ。その結果、ヘビとは毒を持ち危険なものであると、刷り込まれてしまっているのである。

実際のところ、本土で言えば、生息しているヘビは全7種、うち毒ヘビはマムシとヤマカガシの2種のみ。しかもヤマカガシに至っては、その攻撃性の低さ故にごく最近まで無毒だとされていた程の無害っぷりである。風評被害もいいところだ。もちろん、一般的に出回っているペットスネークはそのほとんどが無毒、一部の種類のみが極めて弱い毒を持つ程度だ。

3つ目の理由としては、俗に言う「生理的にムリ」というやつだ。これはもう仕方がない。誰にでも嫌いなものはあるものだ。

しかし、よく分からないからだとか、悪いイメージを信じ込んで拒絶してしまうのは、あまりにもったいないことだと思う。まずは先入観を抜きにして、彼らを見つめてみてほしい。きっとその魅力に気づいていただけることだろう。